แชร์

9-24 揺らぐ男 2

ผู้เขียน: 結城 芙由奈
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-22 20:52:32

 お風呂に入り、特にすることも無くなってしまった朱莉は書きかけだった絵葉書を書くことにした。

母に宛てた手紙はすぐに書き終えることが出来たのだが、問題は京極の方だ。

姫宮と一緒にいるあんな写真を見せられてしまった為に朱莉は今後どういう態度で京極に接すればいいのか分からなくなっていた。

京極は朱莉にとって謎だらけの人物だったのだ。メッセージを送ると京極に約束はしたものの、それだとすぐに京極から返信が来てしまう。それならまだ絵葉書を書いて出した方がいいだろうと朱莉は考え、今京極に手紙を書こうとしているのだが……。

「京極さんが航君みたいに分かりやすい性格だったら良かったのに……」

本当は正直な所、手紙を書くのも迷いがある。しかし、電話越しから聞こえて来た京極の朱莉を案ずるような声。東京で散々京極にお世話になったことを考えると、何も知らないフリをして京極に手紙を書くしか無かった。

「取りあえず私のことはあまり書かないようにして、ネイビーのこととマロンの状況を尋ねる内容の文章にしようかな……」

そして朱莉はペンを手に取った――

 色々考え抜いた挙句、朱莉は1時間近くかけてようやく葉書を書き終えた。一通り読み返して、文面がおかしく無いか、誤字脱字は無いかを確認する。

「うん、大丈夫そう。明日葉書出さなくちゃ」

朱莉は玄関のシューズケースの上に葉書を置くと自室へ入った。ベッドの中に潜り込むと、色々と今後のことを考えた。

 京極は勘のいい人間だ。もし仮に朱莉が生まれたばかりの明日香の子供を抱いて、あの億ションに戻った時の京極の反応はどうだろう?

恐らく絶対に朱莉が産んだ子供では無いという事がすぐにバレてしまう。もし、そうなったら今迄塗り固めて来た嘘が全てバレてしまう。京極には恩義があるが。彼とは距離を置いた方がいいだろう。

「翔先輩と離婚をするまではあの億ションにいたくないな……。赤ちゃんと一緒に何処か別のマンションに住めればいいんだけど……」

姫宮には何でも相談するようにと言われているが、姫宮と京極の関係が謎である以上、彼女の力を借りるわけにはいかない。

(明日……翔先輩に……相談して……みよう……)

そして、朱莉は眠りに就いた――

****

深夜1時。

疲れた体を引きずりながら航は朱莉の住むマンションへと戻って来た。

エレベーターに乗り込むと、5階行のボタンを押し、欠伸
อ่านหนังสือเล่มนี้ต่อได้ฟรี
สแกนรหัสเพื่อดาวน์โหลดแอป
บทที่ถูกล็อก

บทที่เกี่ยวข้อง

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   9-25 朝食の会話 1

     翌朝―― 6時に起きた朱莉がキッチンへ行くと、テーブルの上に航からのメモが乗っていた。『おはよう朱莉。今朝は9時に出掛けるから、悪いけど8時まで寝かせてくれないか? よろしく』「航君何時に帰って来たのかな? でも8時なら余裕があるよね。あ、それなら!」朱莉は出掛ける準備を始めた—―8時――航が目を擦りながらキッチンにいる朱莉に声をかけてきた。「おはよう、朱莉」「おはよう、航君。ねえ、昨夜は一体何時に帰って来たの?」「う~ん……夜中の1時か? その後、シャワーを浴びて……寝たのは1時半頃だった気がするな」それを聞いた朱莉は心配そうに眉を潜めた。「ねえ……。身体の具合はどう? 疲れたり……してない?」「な、何言ってるんだ。大丈夫に決まってるだろう? 俺はまだ22だし、睡眠時間だって6時間以上取っているんだから」朱莉がそこまで自分のことを気に掛けてくれているのかと思うと、つい顔が緩みそうになり、慌てて視線を逸らせた。「そう? ならいいんだけど……。ねえ、朝ご飯、今日は家で食べれる?」「ああ。今朝は余裕があるから大丈夫だけど……」航がそこまで言いかけると、みるみる内に朱莉の顔が笑顔になる。「な、な、何でそんな嬉しそうな目で見るんだよ」思わず航の顔がカッと熱くなる。「だって……一緒に食事が出来るのが嬉しくて」朱莉はにこやかに答える。「朱莉……」(駄目だ、勘違いするな。朱莉が俺と食事をしたいのは俺に気がある訳じゃなくて、誰かと一緒に食事がしたいだけなんだから!)航は必死で自分の心に言い聞かせた。「あのね、実は今朝はご飯じゃないんだけど、いいかな?」席に着いた航に朱莉は尋ねた。「ああ、別に何でもいいぜ。俺は好き嫌いは無いから」「良かった〜。実はちょっぴりリッチな高級食パンを売っているお店が近所に出来て、今朝買って来たの」朱莉は買って来た食パンを航に見せた。「何? 朝からわざわざ買いに行って来たのか?」「うん、まだ私も一度も食べた事が無いんだけど……航君と一緒に食べたいなって思って買って来たの」「そ、そうだったのか?」(だから……勘違いさせるような事を俺に言うんじゃない!)航は朝っぱらからすっかり動揺していた。ただでさえ昨夜偶然目にした京極宛のポストカードで頭の中は一杯なのに、その上朱莉の勘違いさせるようなこの言

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-23
  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   9-26 朝食の会話 2

     玄関で靴を履く航に朱莉は尋ねた。「航君の洗濯物はどうしてるの?」「洗濯……? ああ、コインランドリーで洗ってるけど?」「やっぱり……。ねえ、今も洗濯物持ち歩いているの? ひょっとしてそのリュックの中身がそうなの?」「ああ。そうだけど……?」「出して、私が洗濯するから」途端に航の顔が真っ赤に染まる。「な、な、何言ってるんだよ! 男の洗濯物をあ、洗うなんて……」「え? だって家のお母さんは家族全員の洗濯物を洗うでしょう?」「お母さん……」航は開いた口が塞がらなくなってしまった。(何だ? 朱莉は……本気でそんなこと言ってるのか?)「それに航君は……私にとって家族みたいな人だし」朱莉の言葉に航は思わず顔が熱くなった。(え? 朱莉……それってひょっとして俺のこと……?)「航君は……何だか私の弟みたいな気がして」「弟……」その言葉に航の希望はガラガラと音を立てて崩れた。「あ~もう、分かったよ。好きにしてくれよ……」航はリュックを降ろすと洗濯物が入ったレジ袋を朱莉に手渡した。「なあ……本当にこんなことまで朱莉にやらせていいのかよ?」「うん。だって一緒に今は暮してるんだから当然でしょう?」「朱莉……ありがとな」航は思わず朱莉の頭を撫でようとして……慌てて手を引っ込めた。「それじゃ行って来る。今日は……19時には帰って来れると思うから……」最後の方は小声になってしまった。「うん、行ってらっしゃい。食事用意して待ってるね」「行ってきます」航はドアを閉めると、顔を真っ赤に染めた。(何だよ、この会話……まるで夫婦の会話みたいじゃないか…)「さて、行くか」今の自分の考えを振り切るように航は声に出すと、エレベーターホールへ向かって歩き始めた—―**** その後、朱莉は洗濯を回しながら、食器の後片付け、部屋の掃除に洗濯干しと休まず動き続けた。そして一通り家事が終わると、出掛ける準備を始めた。これから絵葉書の投函と、食事の買い出しに行く為である。「あ、その前に……」朱莉は翔との連絡用のスマホを取ると、メッセージを送った。それは昨夜朱莉が寝る前に考えていた事である。明日香の子供を連れて億ションに戻った場合、京極に見られてしまう可能性があること。京極は勘が鋭い男なので朱莉が産んだ子供ではないことを見抜かれてしまう可能性がある

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-23
  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   9-27 無駄な訴え 1

     朱莉がスーパーで買い物をしている時、翔からメッセージが入ってきた。「え? もうこんなに早く返信してくれたの?」(何て書いて来たんだろう……)朱莉はレジかごを持って、隅の方に移動するとドキドキしながらスマホをタップした。『元気にしていたかい? 明日香は今アメリカで快適に過ごしているよ。体調も良さそうで安心している。ところでメッセージについてだけど、あいにく君が今住んでいる億ションを手放す訳にはいかないんだ。あの部屋は購入したもので、将来俺と明日香と子供の3人で住むことに決めている。だからそれまでは朱莉さんが住んで、あの部屋の状態を維持しておいて貰いたい。悪いが引っ越しの件は諦めてくれ。京極の話だけど、朱莉さんの子供ではないと本当に彼にバレてしまうのだろうか? 俺はそうは思わないけど。もし怪しまれたらその時は何とかうまい言い訳をしてくれないか? 無茶な事を言っているのは分かっているが、朱莉さんにしか出来ないことなんだ。悪いけどよろしく頼む』「……」朱莉はそのメッセージを絶望的な気持ちで見つめていた。多分別のマンションに移り住む許可は得られないのでは無いかと思っていたが……翔自身にはそのつもりは全く無いのだろうが、朱莉の心を傷つけるには十分すぎる内容で訴えは無駄に終わってしまった。「ふ……」朱莉は手で自分の口元を押さえた。思わず目頭が熱くなり、涙がこぼれそうになるのを必死で我慢する。翔のことを好きで無ければこんなにも心を傷つけられることは無いのに。悲しいことに朱莉は自分の命を救ってくれた翔に対する恋心を未だに捨てきれずにいた。(もう嫌だ……。いっそ、翔先輩を嫌いになれればいいのに……。いつまでも未練がましい、こんな自分が一番嫌い……)スーパーの隅で朱莉は必死で涙が出そうになるのを堪えるのだった—―****「ただいま〜」19時――航が玄関のドアを開けて帰宅した。「お帰りなさい」エプロンを付けた朱莉が笑顔で玄関まで迎えにやって来た。「ただいま。あのさ……じ、実は日頃朱莉には色々世話になってるから今日は朱莉にお土産を買って来たんだ」航はテレ臭そうに頭を掻く。「え? お土産?」「あ、ああ。これなんだけどさ……」航が差し出してきたのは紫芋タルトの入った紙袋だった。「2人で一緒に食べようかなって思ってさ。朱莉は甘い物好きか?」「うん、

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-23
  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   9-28 無駄な訴え 2

     風呂から上がった航がキッチンへ行くと、丁度朱莉が食事をテーブルの上に並べている所だった。「あ、航君。もう食事にしよう、座って?」「ああ」朱莉に促され、航は席に着く。食卓に並べられたのはメインの酢豚に、ご飯、豆腐とわかめの味噌汁、青梗菜とエビの中華炒め、そして春雨サラダである。「へえ~今夜の料理は酢豚か……旨そうだな」「そう? ありがとう。ほら、航君は暑い中、外でお仕事して疲れているでしょう?」「あ、ああ……。そうだな。」「だから疲労回復に酢豚がいいかなって思って。よくお酢や豚肉は疲労回復に良いって言われてるから」「朱莉……俺のことを気遣って……」航は感動のあまり言葉に詰まってしまった。(いつもこんなに親切にされたら……俺、本当に勘違いしてしまうじゃないか。お前が俺のことを……)だが、実際はそんなことはあり得ないのは航はよく分かっていた。所詮自分は朱莉に取って弟のような存在でしか見られていないのだ。「ねえ、航君。ビールは今飲む?」「いや、後でいい。今は朱莉の手料理を味わいたいからな」いつの間にか航は朱莉に対する心境の変化により、素直な気持ちで話せるようになっていた。そして朱莉がこちらをぽかんとした目で見ていることに気が付いた。「どうした? 朱莉」すると朱莉は頬を赤く染めた。「うううん、今航君が……私の手料理を味わいたいって言ってくれたことが嬉しくて」(か、可愛い……)朱莉の言葉は最後の方は途切れてしまったが、朱莉の照れる姿を見た航は不覚にも見惚れてしまった。**** 食事が済んで朱莉が後片付けをしている間、航はリビングでPCを前に今迄カメラに収めて来た画像の整理をしていた。「航君」不意に名前を呼ばれて航は顔を上げた。「何だ?」「私もお風呂に入って来るから、もしビールを飲むなら自由に冷蔵庫から開けて飲んで構わないからね」「ああ。分かった。ありがとう」航が言うと、朱莉は笑みを浮かべてバスルームへ向った。「ふう~……」航は上を向いて、首をコキコキと鳴らした。「ビール……貰うか」 航が缶ビールを飲んでいると朱莉がお風呂から上がって来た。「朱莉、ビール貰ってるぞ」「うん、いいよ。自由に飲んでね」そして朱莉は何故かリビングに来ると航の前に座った。「な、何だよ……」突然自分の前に座って来た朱莉に押され気味

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-23
  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   9-30 不眠の朝 1

     航は暫く朱莉のスマホが鳴り続けるのを無言で見つめていた。本音を言えば、この電話に出て文句の一つや二つ言ってやりたい。だが、もし自分がこの電話に出たら?朱莉がひょっとすると男と浮気をしているかもしれないと疑われてしまう。契約違反だと言われて違約金を払わされでもしたら? 住む場所を追い出されてしまったらどうする?色々と悪い考えばかりが航の頭の中に浮かんでくる。だから航は電話に出たい気持ちを耐えた。翔に文句を言ってやりたい衝動を堪えるしかなかった。やがて、電話の音は鳴りやみ、航は溜息をつくと朱莉のスマホを手に取った。悪いとは思いつつ、朱莉の涙の訳が、今まで航の知る限り一度も電話を掛けてきたことが無かった翔が何故突然電話を掛けてきたのか、航はその理由が知りたかった。 朱莉はテーブルの上に突っ伏したまま眠っている。「ごめん、朱莉。スマホの中……見せてもらうな」航は眠っている朱莉に断りを入れるとスマホをタップした。ひょっとするとロックがかかっているのでは無いかと思ったが、その心配は皆無だった。航はメールをタップしてメッセージを表示させた。それは本日翔が朱莉にあてて送って来たメッセージだった。読み進めていき、徐々に航の顔が険しさを増していく。最後まで読み終えた時には翔に対する激しい怒りで一杯だった。(くそ……っ! 一体この内容は何なんだ? 自分達のことしか考えていないじゃないか! 朱莉の気持ちを考えたことがあるのか!? こんな横暴な男は今まで見たことが無い! 朱莉が助けを求めているってことに気が付いていないのか? 面倒なことは全て朱莉に……こんなひ弱な朱莉に丸投げじゃないか!)航は深呼吸をして気持ち落ち着かせると、朱莉が翔に送ったメッセージを表示させた。その内容を読み……航の顔には悲しみが宿った。朱莉がとても困っていることが、悩んでいることがこのメッセージからひしひしと感じられた。(朱莉はどうやら京極のことで困っているようだな……。だったら尚のこと、この俺に相談してくれればいいのに……俺だったら……)そこまで考えて航は思った。(俺だったら? 本当に朱莉の力になれるのか? 何せ相手は億ションに住むような男だ。それに朱莉が書いたポストカードによると京極に恩義があるようだ。だから朱莉は京極の存在を無下にする事が出来ないのか……?)「もっと早く朱莉と俺

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-23
  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   9-31 不眠の朝 2

    「おはよう、航君……って何? 一体どうしたの? 何だか顔色が良くないけど?」航は何だか疲れ切った顔をしている。「ああ、おはよう。朱莉」返事をする声も何所か元気が無い。「ねえ……航君。もしかして何所か具合でも悪いの?」「い、いや……。ちょっと寝不足なだけだから」航は無理に作り笑いをする。(くそ……! あんなメッセージを読んでおちおち寝ていられるか)昨夜はずっとベッドの中で、どうすれば朱莉の手助けをしてあげる事が出来るのか、ずっと考え……結局何も良い考えが浮かばないまま夜が明けてしまったのだ。寝不足で頭がぼんやりするが、今日は尾行をして、浮気の決定的現場の動画を撮影してこなくてはならない。一番憂鬱な仕事をしなければならないのだ。だが、これさえ済めば……。航は朱莉の顔をチラリと見た。「なあ、朱莉」「うん。何?」「あの……さ、今日の仕事が無事終了すれば、もう後は殆ど楽な仕事しか残っていないんだ。だから……明日からは俺も時間の融通が利くようになるから……」航は中々要件を切り出す事が出来ない。すると朱莉が言った。「そっか。それじゃ明日からは少しはゆっくり過ごす時間が取れるってことなんだね?」「そう、それだ! 朱莉、俺が言いたかったのはまさにその事なんだよ!」航は力を込めて笑顔になる。「それなら明日からは好きなだけ、この部屋でゆっくりしていればいいよ。もし1人の時間が欲しいなら、私は何所かに出かけていてもいいから」(この際だから、一度行ってみたいと思っていた美ら海水族館に行ってみようかな?)「い、いや、朱莉! そうじゃなくて、俺は朱莉と……その、沖縄の色んな場所へ遊びに行ってみたいなって思って……」航はそこで言葉を切った。「朱莉……?」朱莉は俯いて、目を擦っている。「朱莉!? 泣いてるのか? 俺……何かまずいこと言ってしまったか!?」航はすっかり焦ってしまった。自分の今言った台詞の何が朱莉を泣かせてしまったのか全く見当がつかなかったからだ。すると朱莉は目を擦りながら航を見上げるとニッコリ笑った。「うううん、違う。そうじゃないの……嬉しくて……」「え?」「私、沖縄に来てからずっと孤独で……翔さんには親しい人を作るなって言われていたし。だからなるべく出歩かないように過ごしていて……でも、本当は沖縄の色々な場所に行ってみたいって

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-23
  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   9-32 前兆 1

     寝不足ではあったが、明日からの仕事を楽にして朱莉と2人で沖縄観光をする為に航は仕事を頑張った。対象者を尾行し続け、ついに浮気の決定的瞬間を動画に収めることに成功したのだ。カメラをリュックにしまう航の顔には笑みが浮かんでいる。「よし、この証拠映像があれば依頼主は確実に有利な条件で離婚することが出来るだろう」小さく呟くと、周辺を伺いながら身を隠していた茂みの中から出てきた。空を見上げると大分太陽は西に沈み、沖縄の空がオレンジ色に変化している。「さて、帰るか」航はリュックの中に機材をしまうとその場を後にした——**** 朱莉は家で夜ご飯の準備をしていた。今日のメニューはキーマカレー。今朝の航は元気が無かった。ひょっとすると夏バテをしているのでは無いかと朱莉は思い、ネットで夏バテに効く料理が無いか調べた所、辛みのある料理が良いと書かれていたのだ。(航君は好き嫌いが無いって言ってたから、きっとこれも食べられるよね)フライパンで煮込んでいる間にサラダの準備をしていた時。朱莉の個人用スマホに着信を知らせるメッセージが入って来た。(誰からだろう? 航君かな?)朱莉はスマホを手に取り、その着信相手を見て驚きのあまりスマホを取り落しそうになった。相手は何と京極からである。(京極さん……ど、どうして……? 絵葉書は昨日投函したばかりだから届いているはずは無いし……)しかし、相手は何と言ってもあの京極である。朱莉は緊張しながらスマホをタップしてメッセージを表示させた。『こんにちは、朱莉さん。沖縄の暮らしはどうですか? 海に行って日焼けとかはしていませんか? ビッグニュースがあります。今はまだ言えませんが、待っていて下さいね』メッセージの内容はたったこれだけである。「ビッグニュース……待っていて下さい……?」朱莉はメッセージを読み返した。(京極さん……こんな意味深な書き方をされると不安な気持ちになってしまいます……)朱莉は溜息をついた。きっと今メールでビッグニュースとは何かを尋ねても、あの京極の事。はぐらかして答えてはくれないだろう。朱莉はすぐに返信をすることにした。『はい、お待ちしています』それだけ書いて、メッセージを送信した。それ以外に何を書けばよいのか朱莉には見当がつかなかった……。****18時半――「ただいま! 朱莉!」航が上機嫌

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-24
  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   9-33 前兆 2

     朱莉と航は向かい合わせで食事をしていた。航はキーマカレーが余程気に入ったのか、既に2杯目を食べている。「朱莉。明日だけど何時にここを出ようか?」「私は別に何時でも構わないよ。でも、出来ればゆっくり水族館の中を見たいな。あ、あのね……航君笑わないで聞いてくれる?」朱莉は恥ずかしそうに俯くた。「何だ? 遠慮せずに言えよ。別に笑ったりしないから」「本当? それじゃ言うけど……実は私この年になっても、まだ一度も水族館て行った事が無いんだ」「え? そうなのか? それじゃ俺と明日行くのが初めてなのか?」それを聞いた航は自分が情けないほど、口元が緩んでしまった。「あ……やっぱり笑ってる?」朱莉が上目遣いで航を見た。「い、いや。違うって。そうじゃないんだ。ただ……朱莉の初めての相手が俺だってことが嬉しくて……」航は言いかけて、途中でとんでもない発言をしてしまったことに気が付いた。(し、しまった……! マ、マズイ。今の言い方、捕らえようによっては……俺、恐ろしいことを口走ってしまったぞ!)恐る恐る朱莉を見る。けれど朱莉は何を考えているのか、美味しそうにキーマカレーを食べ続けている。(よ、良かった……朱莉が極端に鈍い女のお陰で助かった……)航は心の中で安堵し、明日のスケジュールを頭の中で考えた。美ら海水族館の開始時間は8:30からである。(開始時間に合わせていくと6時には出た方がいいかもしれないけど、それだと早すぎだからな……)「よし、朱莉。明日は9時に出よう。ちょっと出るには遅い時間かもしれないが、別に明日は水族館だけ行けばいい話だからな。他の場所はまた翌日に行こう」「うん」航の言葉に朱莉は笑みを浮かべて頷いた——****  そして、日付が変わって翌日の朝――夜の内に洗濯を済ませておいた朱莉はベランダに洗濯物を干していると、航が部屋から出てきた。「おはよう、航君。サンドイッチを作ったから一緒に食べよう」「ええ!? 忙しくなかったか? 朝っぱらからサンドイッチを作るなんて」「そんなこと無いよ。意外と簡単なんだから。さ、食べよ」朱莉が用意したサンドイッチは卵サンドに、ハムレタスサンド、そしてツナサンドだった。そしてそれを野菜ジュースと一緒に食べる。「うん、朱莉は本当に料理が上手だよな」航はサンドイッチを口にしながら朱莉を見つ

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-24

บทล่าสุด

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-20 翔の隠し事 2

    「翔さん、落ち着いて下さい。医者の話では出産と過呼吸のショックで一時的に記憶が抜け落ちただけかもしれないと言っていたではありませんか。それに対処法としてむやみに記憶を呼び起こそうとする行為もしてはいけないと言われましたよね?」「ああ……だから俺は何も言わず我慢しているんだ……」「翔さん。取りあえず今は待つしかありません。時がやがて解決へ導いてくれる事を信じるしかありません」やがて、2人は一つの部屋の前で足を止めた。この部屋に明日香の目を胡麻化す為に臨時で雇った蓮の母親役の日本人女子大生と、日本人ベビーシッター。そして生れて間もない蓮が宿泊している。 翔は深呼吸すると、部屋のドアをノックした。すると、程なくしてドアが開かれ、ベビーシッターの女性が現れた。「鳴海様、お待ちしておりました」「蓮の様子はどうだい?」「良くお休みになられていますよ。どうぞ中へお入りください」促されて翔と姫宮は部屋の中へ入ると、そこには翔が雇った蓮の母親役の女子大生がいない。「ん? 例の女子大生は何処へ行ったんだ?」するとシッターの女性が説明した。「彼女は買い物へ行きましたよ。アメリカ土産を持って東京へ戻ると言って、買い物に出かけられました。それにしても随分派手な母親役を選びましたね?」「仕方なかったのです。急な話でしたから。それより蓮君はどちらにいるのですか?」姫宮はシッターの女性の言葉を気にもせず、尋ねた。「ええ。こちらで良く眠っておられますよ」案内されたベビーベッドには生後9日目の新生児が眠っている。「まあ……何て可愛いのでしょう」姫宮は頬を染めて蓮を見つめている。「あ、ああ……。確かに可愛いな……」翔は蓮を見ながら思った。(目元と口元は特に明日香に似ているな)「残念だったよ、起きていれば抱き上げることが出来たんだけどな。帰国するともうそれもかなわなくなる」すると姫宮が言った。「いえ、そんなことはありません。帰国した後は朱莉さんの元へ会いに行けばいいのですから」「え? 姫宮さん?」翔が怪訝そうな顔を見せると、姫宮は、一種焦った顔をみせた。「いえ、何でもありません。今の話は忘れてください」「あ、ああ……。それじゃ蓮の事をよろしく頼む」翔がシッターの女性に言うと、彼女は驚いた顔を見せた。「え? もう行かれるのですか?」「ああ。実はこ

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-19 翔の隠し事 1

     アメリカ—— 明日いよいよ翔たちは日本へ帰国する。翔は自分が滞在しているホテルに明日香を連れ帰り、荷造りの準備をしていた。その一方、未だに自分が27歳の女性だと言うことを信用しない明日香は鏡の前に座り、イライラしながら自分の顔を眺めている。「全く……どういうことなの? こんなに自分の顔が老けてしまったなんて……」それを聞いた翔は声をかける。「何言ってるんだ、明日香。お前はちっとも老けていないよ。いつもどおりに綺麗な明日香だ」すると……。「ちょっと! 何言ってるのよ、翔! 自分迄老け込んで、とうとう頭もやられてしまったんじゃないの? 今迄そんなこと私に言ったこと無かったじゃない。大体おかしいわよ? 私が病院で目を覚ました時から妙にベタベタしてくるし……気味が悪いわ。もしかして私に気があるの? 言っておくけど仮にも血が繋がらなくたって私と翔は兄と妹って立場なんだから! 私に対して変な気を絶対に起こさないでね!?」明日香は自分の身体を守るように抱きかかえ、翔を睨み付けた。「あ、ああ。勿論だ、明日香。俺とお前は兄と妹なんだから……そんなことあるはず無いだろう?」苦笑する翔。「ふ~ん……翔の言葉、信用してもいいのね?」「ああ、勿論さ」「だったらこの部屋は私1人で借りるからね! 翔は別の部屋を借りてきてちょうだい。 あ、でも姫宮さんは別にいて貰っても構わないけど?」明日香は部屋で書類を眺めていた姫宮に声をかける。「はい、ありがとうございます」姫宮は明日香に丁寧に挨拶をした。「それでは翔さん、別の部屋の宿泊手続きを取りにフロントへ御一緒させていただきます。明日香さん。明日は日本へ帰国されるので今はお身体をお安め下さい」姫宮は一礼すると、翔に声をかけた。「それでは参りましょう。翔さん」「あ、ああ。そうだな。それじゃ明日香、まだ本調子じゃないんだからゆっくり休んでるんだぞ?」部屋を出る際に翔は明日香に声をかけた。「大丈夫、分かってるわよ。自分でも何だかおかしいと思ってるのよ。急に老け込んでしまったし……大体私は何で病院にいたの? 交通事故? それとも大病? そうでなければ身体があんな風になるはず無いもの……」明日香は頭を押さえながらブツブツ呟く「ならベッドで横になっていた方がいいな」「そうね……。そうさせて貰うわ」返事をすると

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-18 雨の中の再会 2

     琢磨に礼を言われ、朱莉は恐縮した。「い、いえ。お礼を言われるほどのことはしていませんから」「朱莉さん、そろそろ17時になる。折角だから何処かで食事でもして帰らないかい?」「あ、それならもし九条さんさえよろしければ、うちに来ませんか? あまり大した食事はご用意出来ないかもしれませんが、なにか作りますよ?」朱莉の提案に琢磨は目を輝かせた。「え?いいのかい?」「はい、勿論です。あ……でもそれだと九条さんの相手の女性の方に悪いかもしれませんね……」「え?」その言葉に、一瞬琢磨は固まる。(い、今……朱莉さん何て言ったんだ……?)「朱莉さん……ひょっとして俺に彼女でもいると思ってるのかい?」琢磨はコーヒーカップを置いた。「え? いらっしゃらないんですか?」朱莉は不思議そうに首を傾げた。「い、いや。普通に考えてみれば彼女がいる男が別の女性を食事に誘ったり、こうして買い物について来るような真似はしないと思わないかい?」「言われてみれば確かにそうですね。変なことを言ってすみませんでした」朱莉が照れたように謝るので琢磨は真剣な顔で尋ねた。「朱莉さん、何故俺に彼女がいると思ったの?」「え? それは九条さんが素敵な男性だからです。普通誰でも恋人がいると思うのでは無いですか?」「あ、朱莉さん……」(そんな風に言ってくれるってことは……朱莉さんも俺のことをそう言う目で見てくれているってことなんだよな? だが……これは喜ぶべきことなのだろうか……?)琢磨は複雑な心境でカフェ・ラテを飲む朱莉を見つめた。すると琢磨の視線に気づく朱莉。「九条さんは何か好き嫌いとかはありますか?」「いや、俺は好き嫌いは無いよ。何でも食べるから大丈夫だよ」それを聞いた朱莉は嬉しそうに笑った。「九条さんも好き嫌い無いんですね。航君みたい……」その名前を琢磨は聞き逃さなかった。「航君?」「あ、いけない! すみません、九条さん、変なことを言ってしまいました。そ、それじゃもう行きませんか?」朱莉は慌てて、まるで胡麻化すように席を立ちあがった。「あ、ああ。そうだね。行こうか?」琢磨も何事も無かったかの様に立ち上がったが、心は穏やかでは無かった。(航君……? 一体誰のことなんだろう? まさかその人物が朱莉さんと沖縄で同居していた男なのか?それにしても君付けで呼ぶなん

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-17 雨の中の再会 1

     14時―― 朱莉がエントランス前に行くと、すでに琢磨が億ションの前に車を停めて待っていた。「お待たせしてすみません。九条さん、もういらしてたんですね」朱莉は慌てて頭を下げた。「いや、そんなことはないよ。だってまだ約束時間の5分以上前だからね」琢磨は笑顔で答えた。本当はまた今日も朱莉に会えるのが嬉しくて、今から15分以上も前にここに到着していたことは朱莉には内緒である。「それじゃ、乗って。朱莉さん」琢磨は助手席のドアを開けた。「はい、ありがとうございます」朱莉が助手席に座ると、琢磨も乗り込んだ。シートベルトを締めてハンドルを握ると早速朱莉に尋ねた。「朱莉さんは何処へ行こうとしていたんだっけ?」「はい。赤ちゃんの為に何か素敵なCDでも買いに行こうと思っていたんです。それとまだ買い足したいベビー用品もあるんです」「よし、それじゃ大型店舗のある店へ行ってみよう」「はい、お願いします」琢磨はアクセルを踏んだ――**** それから約3時間後――朱莉の買い物全てが終了し、車に荷物を積み込んだ2人はカフェでコーヒーを飲みに来ていた。「思った以上に買い物に時間がかかってしまったね」「すみません。九条さん……私のせいで」朱莉が申し訳なさそうに頭を下げた。「い、いや。そう意味で言ったんじゃないんだ。まさか粉ミルクだけでもあんなに色々な種類があるとは思わなかったんだよ」「本当ですね。取りあえず、どんなのが良いか分からなくて何種類も買ってしまいましたけど口に合う、合わないってあるんでしょうかね?」「う~ん……どうなんだろう。俺にはさっぱり分からないなあ……」琢磨は珈琲を口にした。「そう言えば、すっかり忘れていましたけど、九条さんの会社はインターネット通販会社でしたね?」「い、いや。俺の会社と言われると少し御幣を感じるけど……まあそうだね」「当然ベビー用品も扱っていますよね?」「うん、そうだね」「それでは今度からはベビー用品は九条さんの会社で利用させていただきます」「ありがとう。確かに新生児がいると母親は買い物も中々自由に行く事が難しいかもね。……よし、今度の企画会議でベビー用品のコンテンツをもっと広げるように提案してみるか……」琢磨は仕事モードの顔に変わる。「ついでに赤ちゃん用の音楽CDもあるといいですね。出来れば視聴も試せ

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-16 帰国の知らせ 2

     朝食を食べ終わり、片付けをしていると今度は朱莉の個人用スマホに電話がかかってきた。それは琢磨からであった。昨夜琢磨と互いのプライベートな電話番号とメールアドレスを交換したのである。「はい、もしもし」『おはよう、朱莉さん。翔から何か連絡はあったかい?』「はい、ありました。突然ですけど明日帰国してくるそうですね」『ああ、そうなんだ。俺の所にもそう言って来たよ。それで明日香ちゃんの為に俺にも空港に来てくれと言ってきたんだ。……当然朱莉さんは行くんだろう?』「はい、勿論行きます」『車で行くんだよね?』「はい、九条さんも車で行くのですね」『それが聞いてくれよ。翔から言われたんだ。車で来て欲しいけど、俺に運転しないでくれと言ってるんだ。仕方ないから帰りだけ代行運転手を頼んだんだよ。全く……いつまでも俺のことを自分の秘書扱いして……!』苦々し気に言う琢磨。それを聞いて朱莉は思った。(だけど九条さんも人がいいのよね。何だかんだ言っても、いつも翔先輩の言うことを聞いてあげているんだから)朱莉の思う通り、琢磨自身が未だに自分が翔の秘書の様な感覚が抜けきっていないのも事実である。それ故、多少無理難題を押し付けられても、つい言いなりになってしまうことに琢磨自身は気が付いていなかった。「でも、どうしてなんでしょうね? 九条さんに運転をさせないなんて」朱莉は不思議に思って尋ねた。『それはね、全て明日香ちゃんの為さ。明日香ちゃんは自分がまだ高校2年生だと思っているんだ。その状態で俺が車を運転する訳にはいかないんだろう。全く……せめて明日香ちゃんが自分のことを高3だと思ってくれていれば、在学中に免許を取ったと説明して運転出来たのに……』琢磨のその話がおかしくて、朱莉はクスリと笑ってしまった。「でもその場に私が現れたら、きっと変に思われますよね? 明日香さんには私のこと何て説明しているのでしょう?」『……』何故かそこで一度琢磨の声が途切れた。「どうしたのですか? 九条さん」『朱莉さん……君は何も聞かされていないのかい?』「え……?」『くそ! 翔の奴め……いつもいつも肝心なことを朱莉さんに説明しないで……!』「え? どういうことですか?」(何だろう……何か嫌な胸騒ぎがする)『俺も今朝聞いたばかりなんだよ。翔は現地で臨時にアルバイトとして女子大生と

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-15 帰国の知らせ 1

    「それじゃ、朱莉さん。次は翔から何か言ってくるかもしれないけど、くれぐれもアイツの滅茶苦茶な要求には答えたら駄目だからな?」タクシーに乗り込む直前の朱莉に琢磨は念を押した。「九条さんは随分心配性なんですね。私なら大丈夫ですから」朱莉は笑みを浮かべた。「もし翔から契約内容を変更したいと言ってきたら……そうだな。まずは俺に相談してから決めると返事をすればいい」するとタクシー運転手が話しかけてきた。「すみません。後が詰まってるので……出発させて貰いたいのですが……」「あ! すみません!」琢磨は慌ててタクシーから離れると、朱莉が乗り込んだ。車内で朱莉が琢磨に頭を下げる姿が見えたので、琢磨は手を振るとタクシーは走り去って行った。「ふう……」タクシーの後姿を見届けると、琢磨はスマホを取り出して、電話をかけた。「もしもし……はい。そうです。今別れた所です。……ええ。きちんと伝えましたよ。……後はお任せします。え? ……いいのかって? ……あなたなら何とかしてくれるでしょう? それだけの力があるのですから。……失礼します」そして電話を切ると、夜空を見上げた。「雨になりそうだな……」**** 翌朝――6時朱莉はベッドの中で目を覚ました。昨夜は琢磨から聞いた翔の伝言で頭がいっぱいで、まともに眠ることが出来なかった。寝不足でぼんやりする頭で起きて、着替えをするとカーテンを開けた。「あ……雨……。どうりで薄暗いと思った……」今日は朱莉の車が沖縄から届く日になっている。車が届いたら朱莉は新生児に効かせる為のCDを買いに行こうと思っていた。これから複雑な環境の中で育っていく子供だ。せめて綺麗な音楽に触れて、情操教育を養ってあげたいと朱莉は考えていた。洗濯物を回しながら朝食の準備をしていると、翔との連絡用のスマホに着信を知らせる音楽が鳴った。(まさか、翔先輩!?)朱莉はすぐに料理の手を止め、スマホを見るとやはり翔からのメッセージだった。今朝は一体どんな内容が書かれているのだろう? 翔からの連絡は嬉しさの反面、怖さも感じる。好きな人からの連絡なのだから嬉しい気持ちは確かにあるのだが問題はその中身である。大抵翔からのメールは朱莉の心を深く傷つける内容が殆どを占めている。(やっぱり契約内容の変更についてなのかなあ……)朱莉はスマホをタップした。『おは

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-14 翔の新たな要求 2

    「本当はこんなこと、朱莉さんに言いたくは無かった。だが翔が仮に今の話を直接朱莉さんに話したとしたら? 恐らく翔のことだ。きっと再び朱莉さんを傷付けるような言い方をして、挙句の果てに、これは命令だとか、ビジネスだ等と言って強引に再契約を結ばせるつもりに違いない。だがそんなこと、絶対に俺はさせない。無期限に朱莉さんを縛り付けるなんて絶対にあってはいけないんだ」琢磨は顔を歪めた。(え……無期限に明日香さんの子供の面倒を? それってつまり偽装婚も無期限ってこと……?)なので朱莉は琢磨に尋ねた。「あの……それってつまり翔さんは私との偽装結婚を無期限にする……ということでもあるのですよね?」(そうしたら、私……もう少しだけ翔先輩と関わっていけるってことなのかな?)しかし、次の瞬間朱莉の淡い期待は打ち砕かれることになる。「いや、翔の言いたいことはそうじゃないんだ。当初の予定通り偽装婚は残り3年半だけども子育てに関しては明日香ちゃんが記憶を取り戻すまで続けて貰いたいってことなんだよ」「え……?」「つまり、翔は3年半後には契約通りに朱莉さんと離婚して、子供だけは朱莉さんに引き続き面倒を見させる。しかも明日香ちゃんが記憶を取り戻すまで、無期限にだ。こんな虫のいい話あり得ると思うかい?」「……」朱莉はすっかり気落ちしてしまった。(やっぱり……ほんの少しでも翔先輩から愛情を分けて貰うのは所詮叶わないことなの? でも……)「九条さん」朱莉は顔を上げた。「何だい」「私、明日香さんと翔さんの赤ちゃんを今からお迎えするの、本当に楽しみにしてるんです。例え自分が産んだ子供で無くても、可愛い赤ちゃんとあの部屋で一緒に暮らすことが待ちきれなくて……」「朱莉さん……」「九条さん。もし、子供が3歳になっても明日香さんが記憶を取り戻せなかった場合は、翔さんは私に引き続き子供を育てて欲しいって言ってるわけですよね? それって……翔さんは記憶の戻っていない明日香さんにお子さんを会わせてしまった場合、お互いにとって精神面に悪影響が出るのではと苦慮して私に預かって貰いたいと思っているのではないでしょうか? だって、考えても見てください。ただでさえ10年分の記憶が抜けて自分は高校生だと信じて疑わない明日香さんに貴女の産んだ子供ですと言って対面させた場合、明日香さんが正常でいられると

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-13 翔の新たな要求 1

     明日香が10年分の記憶を失い、高校生だと思い込んでいる話は朱莉にとってあまりにもショッキングな話であった。「朱莉さん、大丈夫かい? 顔色が真っ青だ」「は、はい。大丈夫です。でもそうなると今一番大変なのは翔先輩ではありませんか?」朱莉は翔のことが心配でならなかった。あれ程明日香を溺愛しているのだ。17歳の時、翔と明日香は交際していたのだろうか? ただ、少なくとも朱莉が入学した当時の2人は交際しているように見えた。「朱莉さん、翔が心配かい?」琢磨が少し悲し気な表情で尋ねてきた。「はい、とても心配です。勿論一番心配なのは明日香さんですけど」「やっぱり朱莉さんは優しい人なんだね」(あの2人に今迄散々蔑ろにされてきたのに……それらを全て許して今は2人をこんなに気に掛けて……)「何故翔さんは九条さんに連絡を入れてきたのですか? それに、どうして九条さんから私に説明することになったのでしょう?」朱莉は琢磨の瞳をじっと見つめた。「俺も、2日前に翔から突然メッセージが届いたんだよ。あの時は驚いた。翔と決別した時に、アイツはこう言ったんだよ。互いに二度と連絡を取り合うのをやめにしようと。こちらとしてはそんなつもりは最初から無かったけど、翔がそこまで言うのならと思って自分から二度と連絡するつもりは無かったんだ。それなのに突然……」そして、琢磨は近くを通りかかった店員に追加でマティーニを注文すると朱莉に尋ねた。「朱莉さんはどうする?」「それでは私はアルコール度数が低めのお酒で」「それなら、『ミモザ』なんてどうかな? シャンパンをオレンジジュースで割った飲み物だよ。アルコール度数も8度前後で、他のカクテルに比べると度数が低い」琢磨はメニュー表を見ながら朱莉に言った。「はい、ではそちらを頂きます」「かしこまりました」店員は頭を下げると、その場を立ち去っていく。すると琢磨が再び口を開いた。「明日香ちゃんは自分を高校生だと思い込んでいるから、当然翔の隣にはいつも俺がいるものだと思い込んでいるらしいんだ。考えてみればあの頃の俺達はずっと3人で一緒に高校生活を過ごしてきたようなものだからね。それで明日香ちゃんが目を覚ました時、翔に俺のことを聞いてきたらしい。『琢磨は何処にいるの?』って。それで一計を案じた翔が明日香ちゃんを安心させる為に、もう一度3人で会いた

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   1-12 重大な話 2

    「九条さんが【ラージウェアハウス】の新社長に就任した話はニュースで知ったんです。あの時九条さん言ってましたよね? 鳴海グループにも負けない程のブランド企業にするって」「ああ、あの話か……。あれは……まあもう1人の社長にああいうふうに言えって半ば命令されたからさ。自分の意思で言った訳じゃ無いが正直、気分は良かったな」琢磨は笑みを浮かべる。「あの翔に一泡吹かせることが出来たみたいだし。初めはテレビインタビューなんて御免だと思ったけどね。大分、翔の奴は慌てたらしい」朱莉もカクテルを飲むと琢磨を見た。「え? その話は誰から聞いたんですか?」「会長だよ」琢磨の意外な答えに朱莉は驚いた。「九条さんは会長と個人的に連絡を取り合っていたのですか?」「ああ、そうだよ。実は以前から会長に秘書にならないかと誘われていたんだ。でも俺は翔の秘書だったから断っていたんだけどね」「そうだったんですか」あまりにも驚く話ばかりで朱莉の頭はついていくのがやっとだった。「それにしても朱莉さんも随分雰囲気が変わったよね? 前よりは積極的になったようだし、お酒も飲めるようになってきた。……ひょっとして沖縄で何かあったのかい?」琢磨の質問に朱莉は一瞬迷ったが、決めた。(九条さんだって話をしてくれたのだから、私も航君のこと、話さなくちゃ)「実は……」朱莉は沖縄での航との出会い、そして別れまでを話した。もっとも名前を明かす事はしなかったが。一方の琢磨は朱莉の話を呆然と聞いていた。(まさか朱莉さんが男と同居していたなんて。しかもあんなに頬を染めて嬉しそうに話してくるってことは……その男、朱莉さんに取って特別な存在だったのか?)朱莉が沖縄で男性と同居をしていた……その事実はあまりに衝撃的で、琢磨の心を大きく揺さぶった。「それでその彼とは東京へ戻ってからは音信不通……ってことなのかい?」内心の動揺を隠しながら琢磨は尋ねた。「はい。そうです。だから条さんとは連絡が取れて嬉しかったです。ありがとうございました」お酒でうっすら赤く染まった頬ではにかみながら琢磨にお礼を言う朱莉の姿は琢磨の心を大きく揺さぶった。「そ、そんな笑顔で喜んでくれるなんて思いもしなかったよ。でも……そうか。朱莉さんが以前よりお酒を飲めるようになったのはその彼のお陰なんだね?」「そうですね……。きっとそう

สำรวจและอ่านนวนิยายดีๆ ได้ฟรี
เข้าถึงนวนิยายดีๆ จำนวนมากได้ฟรีบนแอป GoodNovel ดาวน์โหลดหนังสือที่คุณชอบและอ่านได้ทุกที่ทุกเวลา
อ่านหนังสือฟรีบนแอป
สแกนรหัสเพื่ออ่านบนแอป
DMCA.com Protection Status